読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

マンガルチャー

無料で読めるスマホアプリの漫画を紹介中

絶対に読むべき超名作「ピアノの森」 このマンガに出会えて本当に良かった

ピアノの森(1) (モーニングコミックス)

さて、先日「ピアノの森」を先日読み終えました。これ、凄いですね。音楽を題材にしたマンガというのは最近よく見かけますが、このピアノの森の圧倒的な世界観は、本当に凄い。

そんな心に残った名作「ピアノの森」について、読んだ感想を思ったままに書きたいと思います。正直、かなりのネタバレを含むので、先を知りたくない人は読まないで下さい。

この記事は、「ピアノの森を知らない人にぜひ読んで欲しい」という思いと、「ピアノの森を読んだ人達との感想を共有したい」という思いから書く特別な記事です。それではいってみましょう。

ピアノの森のあらすじ

森の端と呼ばれるヤクザ、ハグレモノが住む街「森の端」に娼婦の息子として生きる主人公「一ノ瀬海(いちのせかい)」。彼は、誰にも弾けない森に置かれたグランドピアノを普段からおもちゃのように扱い、彼だけがそのピアノを弾くことができた。

そんな彼の元に転向してきた世界的に有名なピアニストの息子である「雨宮修平(あまみやしゅうへい)」。ピアニストを目指す彼は、森のピアノを引く一ノ瀬海に衝撃を受ける。

それとほぼ同時期に一ノ瀬海は、元々有名なピアニストであった音楽教師「阿字野壮介(あじのそうすけ)」の目に留まり、コンクールに応募することとなる。

 

森の端でハグレモノの中で暮らしてきた一ノ瀬海だが、修平や、阿字野、そしてコンクールの面々と出会っていくことで、少しづつピアニストになっていく一ノ瀬海。

小学生からスタートし、彼が17歳になるまでピアニストとなるまでを描いた大傑作。

 

感想

 このマンガは大きく分けて幼少期と、青年期の2つで構成されています。もう少し具体的に言うと、幼少期は地域のコンクールに出場するところまで。青年期のメインは、ポーランドで行われるショパン・コンクールがメインになります。

 幼少期は自由奔放な小学生らしさが溢れていて、青年期には一ノ瀬海と雨宮修平の心の描写(人間らしいドロドロとした部分も含めて)が描かれています。

 

このマンガは本当に凄い。面白い漫画というのはたくさんありますけど、心に響くマンガというのはその中でも絞られてきます。

どんなところが凄いのか、もう少し深掘りしたいと思います。

 

一ノ瀬海の境遇とそこに現れるピアノの表現力

幼少期の話よりも先に青年期の話になってしまうのですが、ショパンコンクールで見せる一ノ瀬海のシーンが素晴らしいんですよね。

劇中で、雨宮修平の父親である「雨宮修一郎」が一ノ瀬海がショパンコンクールで優勝をできない理由を言っているのですが、その大きな理由が「17歳という若さでは人生経験が足りずにそれを表現しきれないから」、という事を挙げています。

 

しかし、森の端という恵まれない環境で育ちながらも、自身の母親である玲子(通称レイちゃん)を初め、恩師である阿字野、他にもたくさんの人たちから愛情をたくさんもらいながら生きてきた一ノ瀬海は、17歳という枠組みを超えた表現力を持っています。

そして、森の中という特殊な環境でピアノを引き続けてきた一ノ瀬海は、その世界観を表現して伝えることができるんです。

 

この2つが合わさることにより、類まれなる才能を以って、素晴らしい演奏をする天才ピアニスト、一ノ瀬海となるわけです。

マンガですから、もちろん音は聞こえません。でもね、聞こえるんですよ、一ノ瀬海の優しい音が。一色まことさんが描くキラめくピアノシーンが相まって、演奏シーンはどれも素晴らしいものになっています。

 

ライバルたちの存在

一ノ瀬海は天才ピアニストですが、たくさんのライバル達が存在します。幼少期には、雨宮修平、そして本番では力をいつも出せない丸山誉子、さらに青年期のショパンコンクールでは、中国のパン・ウェイ、ポーランドのレフ・シマノフスキ、同じくポーランドのスターピアニスト、アダム・カロルスキなど。

 

特に、素晴らしいのがショパンコンクールで最後まで優勝を争うパン・ウェイですよね。

狂言回しの役である雨宮修平は素晴らしいピアニストではあるものの、残念ながら一ノ瀬海の天才っぷりにあてられて、その力を発揮できずにショパンコンクールでは終わってしまいます。

一方で、そして自分の厳しい境遇の中で助けとなった阿字野の音を目標として実力を培ってきたパン・ウェイはブレることのない力強い演奏力で人々を魅了します。

 

一之瀬海の最大のライバルという事もあって、出てくるのは後半になりますが、23巻の阿字野と初めて会った直後の「ピアノ協奏曲第一番ホ短調作品11」を弾くシーンがパン・ウェイの演奏シーンの中では断トツに最高にいいですね。

 

養子として引き取った父親は、中国のマフィアであるハオであったため、身内としての温かみがなかった訳ですが、自分の目標にしている阿字野と対面したパン・ウェイの演奏が優しさを持つように変わるシーンはなんとも言葉にできないものがあり、パン・ウェイがピアノを弾きながら優しい表情になっている描写がたまらなくいいんですよね。

 

幼少期の奔放さ

ピアノの森(4) (モーニングコミックス)

順序が青年期と幼少期で逆転しまいましたが、幼少期の一ノ瀬海は青年期とは異なり、子供らしい、むしろやんちゃな生徒ですよね。

森のピアノをずっと弾き続けているものの、ピアノを習う事すらなく、勉強もおろそか。しかし阿字野と出会い、最初はイヤイヤながらもピアノを覚えていく様子はたまりませんね。

 

そして、何よりも印象的なのが、小学生の時に出場したコンサートでしょう。

音楽のコンサートは、きちっとした服で決めて出場するのが当たり前な中で、一ノ瀬海は、靴を履いているのが嫌でポーンと投げ出してから弾くシーンがあります。

この所作が凄く魅力的だったんですよね。曲を自分の物にするために自分のスタイルで弾くという事が伝わってきて。

 

そして青年期へ

ピアノの森(10) (モーニングコミックス)

青年期に入ってからはすぐに、ショパン・コンクールに入るわけではありません。その前に日本で、高校生として路上ライブや、クラブでの演奏、そして冴ちゃんとの恋の話があります。

青年期の話は、一ノ瀬海よりも雨宮修平が主観になっていることが多く、主人公が変わってしまったのではないかという錯覚すら覚えるほど。

 

上述しましたが、雨宮修平は小さいときに初めて一ノ瀬海のピアノの演奏を聴いて、その天才さにあてられて自信を無くしています。高校生になった時にも、その幻影は拭えずそれが悩みとなっている描写が数多く見られて、その苦しさが伝わってきます。

ショパンコンクールには、雨宮修平も出場するのですが、その中でも悩んでいる様子が伝わってきて、読んでいる方も胸が苦しくなるくらい。

 

マンガに登場する狂言回しって、だいたいが主人公よりも能力が高い事が多いと思うんですけど、ピアノの森は逆パターンですよね。雨宮をこの役に持ってくることで、一ノ瀬海の特別感(天使感とでも表現すればいいのでしょうか)が増しているように感じます。

 

 雨宮修平にせよ、一ノ瀬海にせよ、幼少期と違うのはやっぱり心が成長していること。そして成長しているが故に、悩みを見せる描写がより魅力的に際立ち、それがピアノにも反映されて物語を深めているのが、青年期、そしてショパンコンクールでの魅力ですね。

 

このマンガの最大の魅力は、ショパン・コンクールの向こう側

ピアノの森(26)<完> (モーニング KC)

最後まで読んでもらうとわかりますが、主人公がコンクールで優勝することが最終目的とすれば、26巻はエピローグみたいな感じです。でもね、この26巻がたまらなくいいんです。というか、26巻までの話は全て前フリです。

 

ここからは、最後のネタバレが入るので、本当に読みたい人だけ読んでください。読みたくない人は最後のヒトコトコーナーまで飛ばしてください。

 

 

26巻を読んだ感想としては、17歳までの一ノ瀬海のピアノが最も動かしたものは、幼少期のコンクールの聴衆でも、ショパンコンクールの聴衆でも審査員でもなく、阿字野壮介だった、という事に涙が止まりませんでした。

ショパン・コンクールの途中から、一ノ瀬海が、ミュージシャンハンドドクターで世界的な権威であるDr.仲尾に会うわけですが、これは一ノ瀬海が何かしら手の病を抱えているというものだと疑いもせず、そのまま読んでいました。

 

ところが、一ノ瀬海の本当の目的は阿字野が交通事故で失ったピアニストとしての左手を復活させることだったとは・・・。その結末は全く予想してませんでしたね。

阿字野の音が好きだったからこそ、ビデオの中で見る若き日の阿字野の音の先を見たいと願い、これからは先生ではなく、ライバルとしていて欲しいと思う一ノ瀬海。

ショパン・コンクールの中でも、「このコンクールが終わったら、先生でなくなる」という発言を一ノ瀬海は何度もしていましたが、「先生ではなく、ピアニストであって欲しい」という伏線の意味があったんですね。何度も繰り返しになりますが、こんな展開になるとは、全く予想できませんでした。

 

手の手術をし、直ぐにリハビリが途中は上手く行かなかったものの、最終的にカムバックリサイタルで昔の阿字野以上の音を出せるようになり、そして最後が一ノ瀬海とのピアノ協奏曲で、阿字野の恩師であるジャン・ジャック・セローを指揮にして、感動的に締めくくるという素晴らしい大円団。

面白いマンガ程、終わり方が難しい中で、こんなに魅力的な終わり方をしているマンガは数少ないと思います。素晴らしいハッピーエンドで、見ているこちらが幸せでいっぱいになり、涙が止まりませんでしたね。

 

余談ですが、26巻でジャン・ジャック・セローが阿字野に投げかけた

 

壮介 日本だけじゃないんだぞ

男の子は父親を越えて初めて一人前になる・・・って言葉があるのは

おまえはカイにとって越えなきゃならない大きな壁なんだそうだよ

 

というシーン。ピアノの森の中で阿字野が復活するという背景も相まって、最高の名言だったと思います。ジャンじい最高にカッコよかったなぁ。

 

まとめ

このピアノの森は休載や、雑誌の廃刊などを挟みながら1998年から2015年まで連載されていたんです。かなり長い期間の連載となるんですが、最後まで綺麗にまとまっていて本当に魅力的な作品になっています。

このように特別に長編レビューを書いたように、「ピアノの森」は僕にとってとても特別な作品になりました。一色まことさん、本当にありがとうございました。

 

関連書籍